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【本の紹介】『論語と算盤』

今、注目の渋沢栄一(しぶさわえいいち)

 来年2021年は埼玉県が誕生して150年を迎えるそうです。県では、150年の歩みを振り返ったり、ロゴマークやキャッチコピーの募集をしたりするなどのプロジェクトが始まっています。その一つとして、「埼玉偉人特集」が県ホームページに公開されています。1回目の特集で取り上げられたのが渋沢栄一です。『さいたま郷土かるた』(埼玉県子ども会育成連絡協議会発行)でも「日本の産業育てた渋沢翁」として紹介されている人物であり、2021年は大河ドラマの主人公、2024年より新紙幣一万円札の顔になることで、今まさに注目を集めている埼玉県を代表する人物です。今年2020年は渋沢栄一誕生180周年にあたるそうです。

道徳経済合一主義

 渋沢栄一の業績といえば「日本資本主義の父」とも言われ、多くの企業の設立や育成に携わり、日本の経済的な発展の礎を築いた人です。一方で、福祉や教育などの社会事業にも尽力した人物でもあります。

 渋沢栄一が唱えたのが「道徳と経済の合一」です。会社(企業)は利潤(りじゅん)(利益=もうけ)を追求することが目的だが、常にその根底には「道徳」が必要でり、会社を経営する者は、単に自己の利益だけを追い求めるのではなく、「世の中の幸福に尽くすことが大切である」とう考え方です。その考え方は彼の口述をまとめた論語と算盤』(ちくま書房)という本にも色濃く反映されています。

 

人としての正しい生き方

 渋沢栄一のいう「道徳」とは、人としての正しい生き方であり、リーダーとしての「あり方」、人との付き合い方を学ぶものだとしています。彼の考え方は、現代社会の経営者にも重要というだけでなく、いつの時代にとっても人としての生き方や考え方の指針となるものです。教育についても、下のように述べています。

教育について

 今の教育は知識を身につけることを重視した結果、すでに小学校の時代から多くの学科を学び、さらに中学や大学に進んでますますたくさんの知識を積むようになった。ところが精神を磨くことをなおざりにして、心の学問に力を尽くさないから、精神の面で青年たちに問題が出るようになってしまった。
 そもそも現代の青年は、学問を修める目的を間違っている。(中略)
「昔の人間は、自分を向上させるために学問をした。今の人間は、名前を売るためんい学問をしている。」(中略)
 今の青年たちは、ただ学問のための学問をしている。初めから「これだ」という目的がなく、何となく学問をした結果、実際に社会に出てから、「自分は何のために学問してきたのだろう」というような疑問に襲われる青年が少なくない。

  渋沢栄一のことばは、そのまま彼自身の生き様でもあると同時に、今の世の中を生きている私たちにとっても、人生の指針となる内容です。親や教育に携わる者が、子どもを育てる上で何を大切にしなければならないのか、時代を越えて、大きな示唆を与えてくれていると思います。