次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【組織・マネジメント】増大する保護者対応、荒廃する学校

ますます大変になる学校現場

 学校現場において、多忙化に拍車をかけている原因の一つが、教師の子どもへの指導に対する保護者からの苦情や過剰な要求の増加です。ただでさえ、新たな教育施策が次々打ち出され、学校が担うべき内容が雪だるま式に増えています。そのような状況の中での増大するクレーム等への対応は、今や学校現場を大変危険な状況に追い込んでいます。心を病み去って行く教師が増えている背景にも、こうした学校現場の現状があることを見逃してはなりません。

※「いじめ防止対策推進法」成立以降、「社会通念上のいじめ」と「法令上のいじめ」のギャップが、いじめ問題を重大化させている原因となることが多いようです。当事者の保護者は、法律を調べ勉強しているのに対して、教師側の理解が遅れが迅速で適切な対応を鈍られている心配があります。学校現場では、法の理解を進め、積極的に「いじめ」を認知・解消していく体制を整えていく必要があります。

こじれるケースが増えている 

 保護者からの訴えで多いのが、「子ども同士のトラブル(いじめ)に対する先生の対応に納得いかない」「先生の指導が許せない」「学校(管理職)に相談したけど、改善されない」「教育委員会に言っても変わらない」等々。
 最近では、こじれる(炎上する)ケースが増えており、重度化・長期化・複雑化することが増えました。多くの学校が、何らかの形で大変厳しい保護者対応に追われている状況です。文部科学省まで苦情がいくことも増えているようです。私見ですが、教育行政の上部機関に行けば行くほど、訴えた側の言い分が通り、学校を守ってくれなくなる傾向があります。マスコミも評論家も片方の言い分に同調・拡散する傾向があります。学校にとっては、対応に追われ、ますます追い込まれ、極度の多忙化状況となり、2次的3次的なトラブルやアクシデントに連鎖しかねない大変危険な状況に追い込まれていきます。

※最初から、学校と戦う姿勢の保護者は、直接学校に連絡することなく、教育委員会文部科学省などの上部権力を利用して「勝利」を目指す傾向があります。それでも通らないとマスコミに訴えるという行動をとることが多いです。しかし、このような保護者の対応により、肝心な子どもが置き去りにされ、その後の成長を著しく妨げる心配があります。

背景にあるもの

 トラブルや苦情が増えた背景として、「子どもや家庭の変化」や「保護者の孤立化」「学校を巡る社会の価値観の変化」、加えて、アンバランスな職員の年齢構成が進行していることによる指導力・対応力の低下という側面は無視できません。
 ショッキングな事件が起こるたびに、それに対する政治家やマスコミの対応や、新たな法や制度の制定などの影響もあると思います。
 ベテランの大量退職が進み、中堅教員が少ない中で、経験値の少ない若手教員が増加していく学校現場では、危険リスクが拡大しているものと予想されます。特に、増加しているハードなクレームへの対応は、精神的な疲労感や負担感が大変高く、追い打ちをかけるように、学校を苦しくしています。
 心が折れて現場を離れていく先生も大変多く、貴重な人材を失ったり、その対応に追われたりすることで、円滑な学校運営を困難なものにしているケースも多いようです。

学校を荒廃させてはならない ~学校ができること~

 例えば「学力向上が大切」と言っても、先生方が疲弊し、学級や学校全体が荒れたら、学力の向上を望めるものではありません。トラブルやいじめが多い背景に、学級や学校の荒れが見られることも多いです。攻めの学校経営・運営のためには、土台となる安定した状態が必要です。
 このような状況を改善し、学校の教育力を向上させていくには
・旧来の取り組みにとらわれない抜本的な学校経営・運営の改革(脱・前年踏襲)
・負担対効果を考えた働き改革の推進・徹底した業務のスリム化
・一人一人の児童・生徒を大切にした指導の徹底
・教職員の組織的な生徒指導・教育相談力の向上
・積極的な情報発信による信頼される学校づくりの推進
 などを丁寧に積み重ねていくようにしなければなりません。
 各学校が「チームとしての組織力の向上を図る」ことができるかどうかが、加えて前例踏襲型の学校運営から、原理原則を重視した戦略的な学校運営ができるかが大きなカギを握ると思っています。

本当の解決のためには

 現在の学校は、やらなければならないことが多すぎます。厳しい対応も増えています。抜本的に学校現場を改善(救済)していく必要性があります。今、学校現場は疲弊しています。
 
学校現場がやれることには限界があります。それでも善良で教育熱心な先生たちは、子どもたちのために日夜頑張っているのです。どうすれば、教育行政が本気で向き合ってくれるのでしょうか…。
 この状況は、未来の日本にとって大変危険な状況だと思っています。本当の解決のためには、学校現場にだけ対応や改革を押しつけるのではなく、教育委員会文部科学省などが、これまでのやり方や発想を変え、学校現場・教職員の実態に沿った抜本的な改革が必須だと思うのです。施策の多くが、学校現場ではなく、政治家や議会、関係団体の方を見て決められているとしか思えません。

 教育の最前線は教室です。現場の荒廃は、教育の衰退につながります。教育の発展なくして、子どもの成長もなく、ひいては国の発展もないということを理解してほしいと願います。

   【2020.6.20公開記事のリライト】

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