次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

お掃除の天使たち~奇跡の7分間~

 お掃除の天使たち~奇跡の7分間~

 修学旅行の時の往復で利用する新幹線。東海道新幹線以外にも、東北、上越、山陽など多くの新幹線があります。その高い高速性や安全性は、日本が世界に誇る技術となっています。

海外からも注目される人たち

 その新幹線を掃除の面から支える方々がいます。新幹線が東京駅に到着して、乗客が降りてから次に出発するまでの時間、ゴミ拾いから棚上の確認、床掃除や窓やテーブルの拭き掃除、座席カバーの交換、トイレの掃除、イスの回転など様々な作業を実に手際よく行っています。この仕事ぶりがまさに「神業」だとして、世界中のメディアでも紹介されました。ネット上にも“奇跡の7分間”として紹介されています。海外からの視察や研修も多く、アメリカのハーバード大学ビジネススクールでは教材にもなっているそうです。

かつては意識の低い職場だった

 かつては、決して人気のある仕事でもなく、注目もされていませんでした。トラブルも多く、離職率も高かったそうです。上下関係が厳しく、人間関係がギスギスしている。乗客からのクレームも多く、トラブルを減らしたい上司は叱責で現場を押さえつけるばかりでいつも怒っている。何よりも働く人たちの志気が低い職場だったそうです。

ある女性の話

〇60歳を過ぎて、私はこの仕事をパートから始めました。(中略)掃除はきらいじゃありません。でもひとつだけ『おそうじおばさん』をしていることだけは、誰にも知られたくなかったんです。(中略)家族も、嫌がります。『お母さん、そんな仕事しかないの?』30歳になる娘はそう言いました。『親類にバレないようにやってくれ』夫にもそう言われました。

〇1年目の春、私を変える大きな事件がおきました。(中略)そのとき車窓のガラス越しに目があった人がいます。『あっ、ヨウコさん』それは夫の妹の顔でした。その横には肩をちょんちょんと叩かれて振り向いた夫の弟も。見られた…。私、新幹線のお掃除をしているところを見られちゃったんだわ。

〇1週間ほどして電話が鳴りました。私が出ると夫の妹からでした。『働いているとは聞いていたけど、おねえさんがあんなに立派な仕事をしているなんて思わなかったわ』義妹は本気で言っているようでした。『新幹線のお掃除は素晴らしいって、ニュースでもやっていたの、見たの。ずっと家にいたおねえさんがあんなふうにちゃきちゃき仕事をする人だなんて思わなかった。すごいじゃないですか』私はうれしくてうれしくて、なんて返事していいのかわかりませんでした。私はこの会社に入るとき、プライドを捨てました。でも、この会社に入って、新しいプライドを得たんです。

働く人々の意識を変えたものは? 

 この女性のように、何が、働く人やその周囲の人達の見方や考え方を変えたのでしょうか?この仕事のどこが世界から注目されているのでしょうか。この仕事に関する本も沢山出ています。その多くが指摘しているのが、働く人達の考え方の変化です。それまでの単なる《車内清掃》という考えから、《自分達は世界最高の技術を誇る新幹線メンテナンスを清掃という面から支える技術者集団・おもてなしのプロ》と捉えている点です。この変化により、やらされている仕事、収入のために我慢してやっている仕事から、誇りを持てる仕事への変化。そして、スタッフ一人一人が主役となり、仕事に対して自主的に腕を磨こうという姿勢をもち努力しているそうです。

「心」の変化は人生を変える 

 どうやら働く人一人一人の「心」の変化が人生を変え、世界も注目する仕事振りを生み出しているようです。素敵なことか、やりがいがあることか。それは、「何をやる」かだけではなく、その人がそれをどう捉えるかが大きな鍵を握っているようです。
 人生を豊かに生きること、生き生きと過ごすこと。同じ時間を有効なものとできるかどうか。普通のおじさんおばさんである「お掃除の天使たち」は、多くのことを教えてくれています。

◎学校教育が目指しているのは、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創ることであり、未来を担う子ども達を健全に育成していくことです。

◎未来志向の教育を目指すことに価値があります。世(社会)のため、人のため、未来のために役に立つ子どもたちを育てていきましょう。

 

【参考】
『新幹線お掃除の天使たち~「世界の現場力」はどう生まれたか?』(あさ出版
『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書

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山中城