積極的な情報発信のススメ ~小さな負担が大きな負担を軽減する~
積極的な情報発信のススメ
~小さな負担が大きな負担を軽減する~
「学校の経営資源はヒト、モノ、カネである。」と言われてきました。管理職にはそれらをどのように有効に管理運営するのかが問われてきました。最近の学校経営に関する資料では、その3つに加え「情報」も学校の重要な経営資源だとするものが多く見られるようになりました。(「情報」以外にも「時間」「知的資源」「ネットワーク」などをあげているものもあります)
学校が有する資源の中で、モノやカネには限りがありますが、ヒトや情報には大きな発展の可能性があると考えられます。
特に、保護者から信頼される学校づくり、地域とともにある学校づくりには、学校からの情報発信は大変重要な役割を果たします。何よりも、その学校に通う子どもたちにとって、学校からの情報発信は、学校に対する関心や認識を高め、所属意識や自己有用感を育てることにつながります。
数年前、生徒指導困難校だったある中学校が、学校ホームページを中心に「生徒の頑張りを積極的に発信する」ことに力を入れ、生徒の自信と誇りを蘇らせるとともに、保護者や地域からの信頼を回復させ、短期間で落ち着きのある学校状況を作り出すことに成功しています。同様の例は、他でも沢山実証されています。
現在、多くの学校が保護者との厳しい対応に直面しています。これらは、他の危機の連鎖につながる恐れがあるだけでなく、管理職・教職員の疲弊にも繋がり、学校力を弱めていくマイナスのスパイラルに陥っていく危険性があります。
トラブルの多くが「我が子が大切にされなかった」ということが直接の引き金になることが多いのですが、学校と保護者との情報のギャップや、学校に対する漠然とした不安感や不信感などが遠因として考えられるケースがほとんどです。
実際に、SNSやホームページに力を入れている学校からは「苦情が減った」という声を沢山聞きます。積極的な情報発信は、子どもたちや保護者の不安感解消につながり、「不安」が「不満」に発展することを未然に防いでくれる明らかな効果が期待できるのです。大きなトラブルの影には、日常的な沢山のトラブルがあると考えられます。小さな不安が重なると、やがて大きな不満や事故につながっていく危険性があるのです。
SNSや学校ホームページなどの積極的な情報発信を継続・発展させていくためには、多少の負担感を伴います。誰がどのように運営していくのかも工夫しなければなりません。そのようなヒトや組織を学校経営全体の中で育てていくことも必要です。「情報発信など必要ない」「また負担を増やすのか」などという所属職員の考え方から改善を図っていかなければなりません。まずは、情報発信という小さな負担が、子どもたちのやる気を引き出し、保護者や地域との信頼獲得につながる有効なツールとなること、そして、トラブルや苦情といった大きな負担を軽減させていく力になるということの実感を、実践の中から浸透させていくことが重要になるのだと思います。
実践例)
修学旅行先から、子ども達の様子を発信する。
「現地は今日も晴天です。健康観察の結果、全員元気でした。今日は、班別行動で京都市内を観光します」
「2日目の夕食はすき焼きです。みんなおかわりをして沢山食べています。これなら明日も元気に活動できそうです」
大会会場からの中継
「現在、本校〇〇部は□□中学校と対戦中。▲対△で接戦です。怪我人もなく全員頑張っています」
その他体育祭や合唱コンクールなどの行事の様子など、働いている学校に来られない保護者に情報を届けようとする姿勢が大切です。もちろん、普段の授業や生活の様子など「保護者の知りたい」にどれだけ寄り添えるかが勝負になります。