次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【組織・マネジメント】1人の100歩より100人の1歩

個の力に頼った指導の限界

 かつて中学校において生徒指導が大変だった頃(※1)、比較的落ち着いていた学校が、突然荒れ始めた…。という話をよく聞きました。およそ共通しているのは、指導力のある先生が人事異動で抜けてしまったという理由です。
 力のある先生が、生徒指導上困難な生徒を押さえてくれていた、学校全体をリードしてくれていたうちは、その学校はうまく回っていたのでしょう。しかし、そのような先生が抜けてしまった反動はとても厳しく重い形で現実となって現れてくるものです。
学校が立ち直るためには、何年もかかります。風評も残ります。崩れるときはアッという間です。

100人の1歩を大切に

 大切なのは、異動で先生が入れ替わっても、安定して向上していく学校づくりです。これからの学校は「個の力」に頼ることから「組織の力」を高めていくことを考えなければなりません。荒れから立ち直った学校に共通している点は、「情報の共有化とチームによる対応」の徹底です。先生方の日々の「発言」や「行動・態度」もチーム力を高めることに最大限の注意を払っていくことが大切です。
 教員個々の経験だけに頼った不統一な指導、教員間の不協和音・温度差は禁物です。
「1人の100歩より、100人の1歩」が大切です。学校づくりは、優れた指導力ある先生が一人でするものではありません。全員で前進していくことを大切にしましょう。「学級王国」や「学年セクト」(部分幸福)は学校を荒れさせます。教師個人の視点(学級・学年)にばかりとらわれて、学校全体の向上を考えること(全体幸福)を忘れないでください。絶対上手くいきません。

それぞれの持ち味を生かせることこそ強み

 合唱をイメージしてみてください。いろいろな個性・声の人がいて、一つのハーモニーをつくり出していきます。生徒指導も怖い先生、優しい先生、ユーモアのある先生など、それぞれの個性を活かしたハーモニーをつくりだしていくことこそ大切なのだと思います。
 組織的な指導の原点は「全員で指導する」ことです。目指すのは、教職員が「一枚岩」になること(※2)。そこを起点に考えて行動する。教師同士の不協和音・不信感のある学校は、個々の教師を孤立させ、心を重くし、さらに状況を悪化させます。仲の良い明るい教員集団の下では、学校は荒れません。そのような職員集団は、協働性や機動力も高いものです。荒れない学校組織を全員参加で築きあげていきましょう。個々の個性や特性を尊重し合ったり、支え合えあったりする組織こそ柔軟性に富む、真に強い組織だと思います。


 小野田正利先生の本のタイトル『モンスター・ペアレント論を越えて』に次ぎのサブタイトルがついています。
普通の教師が普通に生きる学校~ 
 老いも若いも男性も女性も強いも弱いも優しいも厳しいも、皆が持ち味を生かして安心して働ける、そんな学校を目指したいものです。

※1:最近、中学校における暴力行為などの非行問題行動は減少しているようです。「いじめ」と並んで「不登校」の増加が深刻な問題となっています。私は、新たな「荒れ」だと思っています。一方で、小学校における暴力行為が増加しています。特に、小2~4年生、担任先生が経験の浅い若い担任のクラスで起きている傾向があります。この傾向が、教員の病休者の増加と関連性が見られる点がとても心配です。

※2:学校におけるイノベーションは管理職や一部の教員が旗を振って、みんなが不承不承ついていくものではないと考えます。教員一人一人の参画意識やモチベーションの高さが、相乗効果(シナジー)を起こし、結果、イノベーションに結びついていく形が理想的な形だと思います。
 短期的に結果を出すことが目的なら、トップダウン型でよいと思いますが、結果を出し続けていく(人が入れ替わっても向上し続けていく)組織には育ちません。トップが変われば終わりです。中・長期的に向上していく学校にする為はトップダウンボトムアップの融合が必須です。

   【2020.6.19公開記事のリライト】

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