次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

危機を救い向上していく厚みのある組織 ~重なり合う人間関係づくりを大切に~

◆ある出来事

 県公立高校入試前々日の土曜日「子どもが受験票をなくした。どうしたらよいか」という保護者からの電話が学校に入りました。部活動指導に来ていて、たまたまこのような電話を受けたとき、皆さんならどのような対応をしますか? 「担任に連絡する」それだけで終わらせて良いでしょうか?
 これは実際にあった出来事です。電話に対応した先生は、不安に満ちた保護者の様子から、周囲に聞こえるような声でゆっくりと復唱しながら話しをしました。それにより周囲にいた先生方も事の次第を知り、メモを取る先生がいたり、対応を考えたりして、迅速に連動して動くことができました。

◆その後

 一人の先生が担任の所在を確認して連絡をする一方、他の先生が入試要項と県教育局のホームページを開き情報収集を始めました。他の人は該当クラスの机とロッカー等を確認しに行きました。結果、生徒の机の中から発見され事なきを得たのです。保護者に折り返し連絡し、感謝されてこの件は短時間の内に決着しました。
 その場に居合わせた私は、このチームワークの良さが学校を向上させる「力」になっていると実感したものです。日々のこうした小さな積み重ねが、職場の信頼関係を高め、協働性の高い職場にづくりにつながっているのだと思いました。

◆危険に向き合ったとき、日頃の人間関係が問われる

 突発的に発生する事故やトラブル、難しい生徒指導事案や保護者や地域からの苦情など、学校では沢山のリスクへの対応が必要です。危機的な状況になればなる程、その学校の組織としての真力が問われます。学級王国、学年セクトなどは、危機を増幅させる大きなマイナス要因です。ましてや批判や文句だけでは、人の心を傷つけ組織を弱体化させていきます。苦しんでいる先生がいるときに、どのような手を差し伸べることができるのか、他人事ではなく、当事者意識をもって協力できるのか、そのような人間関係こそが、学校を守り、向上させていく力となります。

◆人を守り、学校を守る重なりあう人間関係

 学校教育の置かれた環境は、年々厳しさを増し、対応しなければならいことが多岐にわたり複雑化しています。同時に教職員の多忙化も進んでいます。ともすると「これは自分の仕事ではない」「自分が責任を負うことではない」と、守りに入ってしまうこともあります。(いわゆる荒れている学校にこの傾向が強い)
 若手教員も増えました、反面、心を病み辞めていく先生も多いのが現状です。多くの困難を克服し、学校力を高めていくためには、厚みのある人間関係、組織づくりが不可欠です。様々な課題を克服し、信頼される学校づくりを進めるためにも、教職員のチーム力を向上させることに一人一人の意識が向いていることが大切です。まずは「一人で悩んだり抱え込まないようにしよう!」と声を掛け合いましょう。
 教員は100人いれば100の個性があります。怖い人もいれば優しい人もいます。経験豊富な人もいれば初任者もいます。目指すは、誰でもがその個性(長所)を生かしながら安心して働ける職場です。普通の人が普通に活躍できるそんな学校ならば、きっと子どもたちも安心して学ぶことのできる学校になっていくのではないでしょうか。

(2020/10/3の記事を加筆しました)