次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【本の紹介】『全員経営』一人はみんなのために、みんなは一人のために

“一人はみんなのために みんなは一人のために”

 組織は、時として1+1=2以上の力を発揮することができます。学校は組織体です。それぞれの学校が、人数の総和以上の力を発揮できるかどうかは、組織を構成するメンバー一人一人の意識に係っているといっても過言ではありません。質の高い組織は、質の高い結果を出し続けることができるようになっていくものです。

 質の高い組織になるためには、「全員経営」の発想が大切です。「全員経営」を実現するには、教職員一人ひとりが、組織やチームの目的を達成するよう、自律的に動かなければなりませんい。管理-非管理の関係を越え、自分の役割と価値を理解し、自らを動機づけながら新たな知を生み出していく。その相互作用により組織全体でそれぞれの総和より高度な知が創発される。

 組織にとって重要なのは、「成果」を生み出すことより「成果を生み出す能力」を高めることです。その違いを理解できていない職場では、「今年の初任者は使えない」などと時間のかかる若手の育成に取り組むより、目の前の成果ばかり追うような職場になってしまいます。また、他のクラスや学年を出し抜いたり、批判したりするなど、本来向かうべき協働とは反対のベクトルの強い職場となってしまいます。そのような組織では短期的な結果を出すことができても、継続的な発展は難しいでしょう。

『全員経営』(日経ビジネス人文庫)には以下のようにあります。

リーダーは、組織の質の向上とメンバー一人ひとりの自律と向上を重視することが求められる。

結果を優先するあまりメンバーの合意を疎かにしてはならない。

一人ひとりの考えや意見を引き出し、尊重するところに人は育つ。(一人ひとりの存在を認め合うことが、人と組織が成長する肥えた土壌となる

リーダーは、「最善の策」をメンバーの実績や立場に関係なく取り入れ、チーム内から閉鎖性や硬直性を排除し、開放性や柔軟性を高めてメンバーの自律性を鼓舞するマネジメントを重視する。

旧来型のリーダーの問題

 世の中の学校や行政において、次のような課題が多いのではないでしょうか?

トップダウンの要素の強い組織では、リーダーによる判断のみが正解とされ、ワンマン経営が行われる。思考が固定化され、柔軟な発想が育たない。創造的な発展や危機への対応力が失われていく。

(組織内では、リーダーに賛成する立場かどうかが重要な要素となり、長期的に質的な低下を招く)

リーダーは独裁的であってはならず、自己を客観視する論理的で合理的な思考ができなければならない。ただ、それだけでは不十分で、最適でタイムリーな判断は情緒性が下支えする。

  反対に、ボトムアップを重視した組織では、リーダーが変わっても組織の継続的発展性が維持されます。学校を引っ張ってきた、管理職やリーダー的な立場の先生がいなくなったとたんに失速する学校の共通点ではないでしょうか。

イノベーションについて

 日々の仕事という凡事の連続が蓄積していくなかで、あるとき非連続性が生まれ、凡事が非凡化する。それが、イノベーションの実態である。

 実践知を発揮するには、演繹的な考え方ではなく、個別具体的の現実から普遍性を持った命題や概念を導き出す帰納的なアプローチが求められる。

 ミドルリーダーの役割

 プロデューサー的なミドルリーダーがネットワークのハブ的な役割を担い、そこに関わる人々と知と知を結びつけていくことが、全員経営の実現には何より必要。

 プロデューサー的なミドルリーダーとは、クローズになりがちな縦割り組織を越え、より大きな関係性に目を向けて、内外にオープンに人やネットワークを形成し、組織全体の向上に貢献できる存在。

 今日、学級経営の善し悪しが、「学力向上」と強い相関関係があることも分かってきています。人の成長と組織の質的向上こそ、「結果」の向上=児童生徒の成長に不可欠な要素だということです。同時に、学校全体の組織的な向上こそ、働く教職員一人一人のベストパフォーマンスを引き出すためには重要なのです。

 

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