次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【本の紹介】『リストラなしの「年輪経営」』

 今回紹介する『リストラなしの「年輪経営」』は、伊那食品工業株式会社の代表取締役会長である塚越寛氏の著した本です。この会社は、創業以来48年間連続で増収増益をあげているそうです。しかし、氏はこう著しています。

「増収増益は、そんなに大切なことでしょうか? 大切なのは社員を始め弊社に関わっている人たちの『幸せ』です。」

 この会社では、この20年間、会社が嫌で退社した人間はゼロなのだそうです。

  今、心を病み病休になる先生が多い今日の学校現場において、「働く社員の幸せを大切にする」という考え方は、とっても大切なのではないでしょうか。教師が幸せになれないような学校では、児童生徒も幸せになれないと思うのです。

 「私は、伊那食品工業が『良い会社』と呼ばれても嬉しくありません。『いい会社』と呼ばれるようになりたいと思います。『いい会社』とは、単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人々が、日常会話の中で『あの会社は、いい会社だね』と言ってくれるような会社です。」

  氏は『遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す』という二宮尊徳の言葉を大切にし、「会社を『いい会社』にして永続させるためには、『遠きをはかる』ことだ。」と考え、『遠きをはかること』を経営戦略としてきたそうです。曰く

 「短期の理解を追い求めるあまり、『遠きをはかる』経営ができなくなります。また、数字至上主義に陥り、『数字が良ければすべてよし』という風土ができてしまいがちです。」
「極端に言うと、『今が良ければ良い』『数字が良ければ良い』という経営がまかり通ってしまうことになります。」

  全国学力・学習状況調査が始まった頃から、学校現場では「学力向上」と言う言葉が盛んに使われるようになりました。平均点を上げることに躍起になっていた学校もあります。調査直前に過去の問題を解かせたり、日頃から小テストを実施したり…。それ自体は悪いことではないかもしれませんが、短期的に身に付けた力は、短期的に剥げ落ちていくものです。本当にそれで学力向上するのでしょうか。もっと中長期的な視点で学力を向上させていく視点の方が大切なのではないでしょうか。

  学校現場では、多くの面で数字が問われることが多くなりました。大切なのは、数字の改善ではなく、教育の質の改善なのだと思います。例えば、先生方が学び合いながらよりよい授業実践を積み重ねていくことで、学びの質を向上させる方が、健全な学力向上策なのだと思います。

 

「私が言うブランドとは『信頼ある企業が、信頼ある製品をつくって、ファンを持つ』ということに他ならない。」

「社員のモチベーションを上げることが、実は経営の最大の効率化なのです。」

成果主義や能力給では、真の意味のモチベーションを上げることはできません。」

「自分たちがやっていることが、『世のため、人のため』になると確信できれば、どんなに苦しくても頑張って働こうと思うものです。」

「何百年も続いた老舗だって、最初から老舗だったわけではありません。創業の志を守って、コツコツと商売のあるべき姿を追い求めてきたからこそ、現在の姿があるのです。」

「中小企業でもすぐにできることは、たくさんあります。言葉遣いを良くする、丁寧な挨拶を心がける、掃除を徹底させる-これなら、お金もかけずに、今すぐできるでしょう。『そんなこと』と、バカにしてはいけません。こうしたことが、ファンづくりにつながるのです。」

「小さなことを軽んじることは、大きなことを軽んじることと同じです。小さな間違いでも、積み重なっていけば大きな間違いになります。逆に、小さくても良いことを行うと、好循環が生まれます。…社員みんなが『もう少し良くしよう』と努力するようになったら、会社はどんどん良くなります。」

「どんなに大きなビジネスでも、最後は一人対一人です。この一人を大切にできないようでは、いずれその会社は衰退していくでしょう。」

  学校で働く私たちにとってもとても重要な示唆を与えてくれる内容だと思います。特に、学校経営や学校運営にあたる管理職はもとより、学年経営を担う中堅の先生方、学級経営を担う担任の先生方、多くの先生方にとって、とても参考になる考え方ではないでしょうか。

 私も自分の働く学校は、

・児童生徒が通って良かった思える学校であること
・保護者や地域の方々が子どもたちを通わせて良かったと思える学校であること
・先生方がこの学校で働けて良かったと思える学校であること

が大切だと考えてきました。

 以下も参考にしてみてください。学校に置き換えてみたらどうなるでしょうか?

  最後に 『いい会社』をつくるために10箇条を紹介します。学校現場に当てはめて考えてみてください。

1 常にいい製品をつくる。
2 売れるからといってつくり過ぎない。売り過ぎない。
3 できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしない。
4 お客様の立場に立ったものづくりとサービスを心がける。
5 美しい工場・店舗・庭づくりをする。
6 上品なパッケージ、センスのいい広告を行う。
7 メセナ活動とボランティア等の社会貢献を行う。
8 仕入先を大切にする。
9 経営理念を全員が理解し、企業イメージを高める。
10 以上のことを確実に実行し、継続する。

 

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