次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【生徒指導・健全育成】クラスが荒れるとき ~2・6・2の原則~

(1)クラスが荒れる時 ~2・6・2の原則~

 児童・生徒の集団には、次のような3つの集団が存在すると言われています。

A:何も言わなくても正しい行動ができ、進んで集団に貢献できる約2割の児童・生徒
B:A・Cの中間に位置する6割の児童・生徒(※状況によりAにもCにもなりうる存在)
C:学力的に課題が多い。反発したり問題を起こ続けたりする約2割の児童・生徒
  (※Cは、家庭状況においても複雑であることや、発達に課題を有していることが多い)

 荒れている学級(学級崩壊=学級が上手く機能しない状況)では、Cの子どもたちへの対応が上手くできないうちに、学級全体が崩れていくことが多く見られます。一筋縄では行かないCの子たちの指導に追われているうちに、中間層の6割のBの子どもたちが、Cの子どもたちの言動を支持したり、同調して同じような言動をしたりする状況となっていきます。このような状況では、Aの子どもたちも、静観するか、我が身を守ることしかできなくなります。 クラスの8割が崩れていくことになれば、すでに「学級崩壊」という状態になります。 

 特に、若い経験値の浅い先生の中には、Cの課題のある2割の子どもたちの指導にばかり気持ち(時間と労力)を奪われ、精神的に疲弊し、学級全体の統率を失ってしまうケースが多く見受けられます。

(2)問題をさらに悪化させるもの 

 トラブルが頻発するようになると、保護者からのクレームが入るようになります。   保護者との難しい対応に追われるようになると、心身ともに疲弊するようになります。
 さらに問題解決に向けて状況を困難にしているのが、管理職や同僚からの批判です。どこかの学級が崩れれば、学校全体の問題であり、学校全体で受け止めて支援していく必要があるにも関わらず、その先生だけの問題として焦点化してしまうようになると悪化の一途をたどります。
 このような状況に追い込まれ、心を病み病休に追い込まれていく先生が、増えているように感じます。特に、初任者や経験の浅い若い先生に多いことがとても心配でなりません。

(3)中間層を成長させる ~課題改善のヒントは中間層にあり~

 学級集団を上手に指導している先生の多くが、AとBの8割の集団を育てることができているという点です。8割が安定した集団に育ってくれば、落ち着いた状況の中で、課題のあるCの子どもたちへの対応が進められるようになるのです。

 注意する点は、指導しやすいAの子どもたちばかりを、頼りにしたり相手にしてばかりいると、6割の中間層の子どもたちが離れていくということです。日々の授業の進め方も注意しましょう。子どもたちは、先生の人柄や指導力、何を大切にしているのかを敏感に見ているのです。未熟でも自分たちの事を真剣に考えてくれているのか…。

 先生の授業が楽しく、他の子に邪魔されたくなければ、ふざけている子に対して、反応しなかったり、嫌な顔をしたりすることで、授業の邪魔をする子への不支持を表明するものです。先生が信頼するに足る人物と感じるようになれば、大きな力となってくれます。
 反対に、授業がわからなかったり、つまらなかった時、ふざけている子に同調して笑ったり、はやし立てたりするのはその表れです。授業の邪魔をする子をヒーローにして、陰で支持するようになることもあるのです。

 かつて、非行問題行動が吹き荒れた中学校において、問題のある生徒は一般生徒からの支持を重視していた傾向があります。先生に反抗的な態度をとることが英雄的行動だったのです。今日の「いじめ」においても、当事者である「いじめる側」と「いじめられる側」の他の、周囲の多数の子どもたち(傍観者)の存在が、大きなカギを握っているものです。

(4)一人で抱え込まない ~学校全体で受け止める~

 どの学校・学年・学級にも大変な課題のある子どもは存在するものです。それでも、やっていけるのは、一人の先生に大変な思いをさせてはいけない、全員で受け止め支援していこうという管理職や同僚が存在するからです。一人で抱え込んで、孤立したらどのような対応も難しくなります。子どもたちを助けられないだけでなく、自分自身をも追い込むことにもなりかねません。 
 「〇〇先生は、もっとしっかり指導すべきだ」「ちゃんと指導してもらわないと困る」的な批判は、できないから苦労しているのであって、その先生を助ける力にならないばかりでなく、学校を改善・向上させる力にはなりません。
 一人の先生の大変な状況に、学校全体で何ができるかを考え、総力を挙げて対応していく姿勢が、管理職にも同僚にも必要なのです。

 大変な子どもを受け持って、うまくいかないケースのほとんどが、周囲からの支援がないばかりか、非難されたりする職場のことが多いようです。このような学校では、いずれ他の面においても問題が発生していくものです。 

【難しい今日的な課題】

 今日的な課題としては、Cのような層の子どもたちと、発達に課題のある子どもたちとが重複しているケースが多いということが指摘されています。
 次のような文部科学省の調査結果も示されています。2012(平成24年文部科学省は「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童 生徒に関する調査」で、学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合が,推定値で6.5%であったことを公表した。この結果を受け補足調査を行ったところ,小学校で82.7%,中学校で76.6%の教員 が6.5%より多く在籍していると捉えているという結果であった。
 この調査結果は、現在の学校現場の現状を捉える上で大変重要な内容であることは間違いありません。ただし、人権にも関わることでもあり、この問題は慎重に議論されなければなりません。

【課題のある子たちへの接し方で問われる教師の姿勢】

 もう一つ言えることは、課題のある子どもたちに対する教師の接し方を、他の子どもたちは見ているということです。困っている子に親切に優しく接していれば、自分が困ったときも助けてもらえると安心するものです。反対に、文句ばかり言っていると、きっと自分が失敗したときも同じように言われるのだと不安になるものです。不安は不満につながります。課題のある子どもたちへの対応は、実は、集団全体にも大きな心理的な影響を与えていることを忘れてはなりません。

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(人が誰かに見せる顔は、目の前の人に対してでなくても、目の前の人には、その人のそういう面がその人の「姿」と印象づけられることを知っておいたほうがよい)

 

 

   【2020.7.3公開記事のリライト】

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