次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

「やる気」について(2)

 
 かつて心理学者たちが「やる気」に関する実験をしたそうです。それは、問題を解けた人に報酬を与える約束をするというものです。
 実験の結果、報酬を与えることによって問題を解決する能力は向上するどころか、むしろ低下してしまうという結果になりました。心理学的には「予告された報酬は、人間の創造的な問題解決能力を著しく棄損すること」がわかっているそうです。
 これらのことから「結果がでたら○○を買ってあげる」というような子どもの「やる気」の引き出し方は、正しくないというだけでなく、弊害でさえあると言えそうです。
 「やる気」を引き出すためには、その子の取り組む姿を温かく見守り、工夫したことや頑張ったことなど小さな変化を肯定的に捉えて、認め伸ばしていくということの積み重ねが必要なのです。言い換えれば、愛情ある手間と時間をかけた丁寧な指導こそ近道のようです。
 「ちゃんとやらないと○○させる」というような脅迫的な指導も当然弊害があります。子どもの中に、必然性や必要性があるかどうか、納得できているかどうかも大切です。
 最近、様々な方面から強調されるようになってきた「非認知能力」の育成が学力や体力の向上と密接な関係があるということも重要な視点となります。
 小さな成功体験を積み重ねながら、子どもの「やる気スイッチ」が入るときがやってくる。学校教育に携わる人々は、それを育て、見守ることのできる存在であってほしと願っています。
 

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【生徒指導・健全育成】伸びる教師、残念な教師

◆子どもたちはアドバルーンを上げている

 新しい学級がスタートすると、しばらくの間は静かな日々が続きます。子どもたちみんながよい子に見えます。比較的指示にも素直に聞き動きます。この子たちとなら、このクラスなら良い一年間になるという教員の期待も大きくなっていく時期です。

 ところが子どもたちは、新しい先生の出方をじっと見守り、学級集団の中での力学(だれがどのような個性をもっているのか、逆らったら怖いのは誰かなど)を、じっと観察している期間でもあります。

 そして、ゴールデンウィーク明けごろから、様々なトラブルが頻発し始め、「こんなハズじゃなかった」「子どもたちを指導しても言うことを聞かない」(制御不能)「苦情が入り始めるた」(子どもの不信⇒保護者からの不信)などという状況に陥っていくのです。

 表面的に良い面を見せながら静かに様子を見ていた子どもたちは、水面下で様々な言動の「アドバルーン」を上げては、小出しに先生や他の子の反応を試しつつ、許容される範囲を見極め、小さなスキを見つけては乗り越えはじめていくのです。不適切な言動というアドバルーンが次々に上がるようになると、既に個別対応によるリカバリーは不可能な状態となっていきます。こうなるとあっという間に「学級が上手く機能しない状況」(学級崩壊)への坂道を下っていくことになります。

 最近、小学校では、経験の少ない若い先生が担任しているクラスで、発達に課題のある子どもの集団を意識しない突飛な言動と、その対応に追われ上手くできないことがきっかけとなって集団が崩れていくことが増えているようです。

◆教師のリアクション3つのパターン

 さらに、様々な課題が表面化してきたときの教師のリアクションにより、状況をさらに悪化させていくことがあります。 
 次の3つのパターンのうち、①は確実に学級は荒れていきます。②は力があると思っている先生が、管理と「力」で子どもたちの言動を押さえていくパターンです。その時上手くいっても、中長期的には荒れにつながっていく危険性を有しています。その学級で反動がでなくても、次の学年になり先生が代わったときに反動が出る可能性があります。①と②で上手くやってきたベテラン等がいると、その学年や学校全体が大変やりずらくなっていく危険性もあります。

①「子どもたちが悪い」「以前の指導の責任」と他者に転嫁をしてやり過ごす。
②厳しく注意したり、罰をあたえたりして従わせる。チェックを厳しくする。
③真摯に指導改善に取り組む。個と集団の信頼関係構築を図り状況打破を目指す。

◆残念な教員

 一人一人の教員の資質からも、学級が機能しない状況を招きやすいタイプがあります。

①鈍感教員(子どもの状態が理解できない)
②学ばない教員(本を読まない。アンチョコにばかり頼る)
③学べない教員(勉強はできるが教育技術が低い教員)
④コミュニケーション不全
⑤「理念」欠如型教員
*「残念」と評する理由はただ一点「生徒を成長させない」教員。
(盗撮や道路交通法違反等の不法行為については対象としていない)
                   (『残念な教員』林純次著(光文社)より)

◆未熟な授業の共通点

 「教師は授業で勝負する」と言います。授業が上手くいっている先生は、子どもたちからも信頼され、学級も落ち着いていきます。

①話はしているが伝わっていない。
②進めているがついてきていない。
③静かにしているが、理解していない。
④静かにしていないのは誰のせい?
*授業の三大ストレス=「見えない・聞こえない・わからない」
*子どもを置きざりにした一人よがりの授業
*自分が何を教えるかは考えているが、子どもがどのように考えるかを想定していない授業。(授業は、教師のトップダウンと児童・生徒のボトムアップで成り立つ)

◆「好きな先生」(アンケート調査より)

・明るい 
・ユーモアがあって楽しい
・一緒に遊んでくれる
・優しい 
・思いやりがある 
・話を聞いてくれる
・教えるのが上手(伸ばしてくれる)

 第一位は「教えるのが上手な先生」です。さらに、教えるのが上手な先生は、明るくユーモアがあって、できない子にも優しい思いやりのある授業を行い、自分の話ばかりではなく、子どもの話を聞くゆとりをもっているということです。

◆教えるのが上手な先生の共通点(伸びる教師に見られること)

・誰のための授業かを考え、工夫している=子ども主体の授業づくり
(子どもの立場・発想で授業を設計することができる)
・子どもの実態をよくとらえている(心の動きを理解している)
・健康で、明るく元気でよく動き、心(情緒)が安定している。
・子どもの声や変化にアンテナが高い。
・「あとでね」と言わないで子どもの声に耳を傾ける。
*信頼関係:見捨てられないという安心感を育てる 
  → 厳しく接しても心は離れていかない。
*無視、無関心は子どもを伸ばさない。
*怒りにまかせて存在を全否定してはいけない。

◆二つの言葉

 〇「学び続ける者のみ、教うる資格あり」(野口芳宏氏のことば)

 〇「子どもの成長は教師の成長に規定される」(長谷川博之氏のことば)

 何年経験しても、どのような立場になっても、謙虚に学び続けていくことを大切にしたいものです。

 

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   【2020.7.7公開記事のリライト】

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【人材育成・教員養成】人を幸せにする学校~決して繰り返してはいけない事~

(1)決して繰り返してはいけない

 これは、西東京市の新任女性教諭:YKさん(当時24歳)が、母親に送った携帯メールの文章です。

 「毎日夜まで保護者から電話とか入ってきたり、連絡帳でほんの些細なことで苦情を受けたり…」
「泣きそうになる毎日だけど…でも私こんな気分になるために一生懸命教師を目指したんじゃないのに…おかしいね。今日も行ってきます」
   (『すべての教師のために。』YKさんプロジェクトより)

 希望に満ちて教職の道に進んだ彼女でしたが、このメールの一週間後に、自殺を図り大切な命を失うことになります。
 公務災害の認定を争った裁判では、「採用直後に担任したクラスで児童の問題行動が相次ぎ、強い心理的負荷を受けた」と指摘されました。加えて、保護者からの厳しい要望に応えきれなかったことや、周囲から救いの手が十分に差し伸べられず、一人で孤立していったことなどが分かってきました。
 極端な例かもしれませんが、このような思いを持つ教員が残念ながら沢山いる現実があります。中でも、将来有望なこれからという若手に多いのです。学級経営が困難になり、指導に疲れ、退職していく先生が毎年沢山います。
 教員も育っていくものです。「若い」「未熟」だというだけで、辛い思いを強いられ、傷つき学校を離れていく。そんな現状を変えていかなければなりません。(かつての学校や保護者には、教員を育てていこうという温かい空気がありました。)

(2)学級がうまく機能しない状況

 現在、生徒指導の課題の一つが、小学校における「学級がうまく機能しない状況」(いわゆる「学級崩壊」)が増えていることです。特に、小学校2・3・4年生に多い傾向なのは、そこに若手が配置されることが多いことや、児童の発達上の課題が顕在化しやすい年齢だからだと考えられます。
 学級が荒れる原因には、様々な要因が考えられますが、最近の共通している点として、集団に適応できない児童・生徒の増加があげられます。中でも、発達上の問題については、学校現場の大きな課題となっています。教育界全体で、真剣に取り組まなければならない大きな課題です。現在のシステム(※)では、ほとんどが現場の努力に任せきりにされている実情があります。

(3)何よりも命を大切に

 教育は、崇高で誇りあるやりがいのある仕事です。次代を担う若手の先生方には逞しく成長していってほしいと思います。かけがえのない子どもたちを かけがえのない先生たちが教え育てていく一期一会の営み、それが教育です。
 「命」を自ら失うようなことはあってはなりません。それは、子どもも教師も一緒です。そのような仲間を絶対に職場から出さない。そんな職場づくりの力に皆さんにはなってほしいのです。大変な思いを乗り越えてきた経験がある皆さんだからこそ、これから同じ道を歩む後輩たちの力になってあげてほしいのです。共に成長していく道を歩んでほしいのです。

(4)白い丸いテーブルが象徴するもの

 YKさんが、勤務していた学校の職員室には、以前、白い丸いテーブルがあり、茶菓子を食べながら、先生方が会話の花を咲かせる憩いの場になっていたそうです。ところが校長が変り、管理上好ましくないという理由からそのテーブルは撤去されてしまったそうです。それから、職員室にはギスギス感が漂い、先生方は職員室に戻らなくなり、次第に他の人のことなんかかまっていられないというよそよそしい雰囲気となっていったそうです。異動時には大量の先生の入れ替わりがあり、新任の彼女が着任した時も、大変な学年ということが分かっている中で、担任を受け持つことになったそうです。
 保護者からのクレームに苦慮する彼女は、管理職からも日々ちゃんと対応するように叱責されていたといいます。職員室でも誰も彼女を気遣う余裕を失っていたようです。彼女自身は、自分を責める気持ちや孤独感を感じるようになり、病院では抑うつと診断されました。そして、自ら命を絶つ道を選んでしまったのです。

 亡くなった彼女の父親は「もし、それまであった職員室の白い丸いテーブルが残っていたら…うちの娘は死ななくて済んだかもしれない」と語っていたそうです。白い丸いテーブルが象徴しているのは、その学校の大切にしてきた同僚性や協力性だったのではないでしょうか。一見無駄と思われる空間や時間の中で、じっくりとその学校の中で醸成されてきたものだったのかもしれません。子どもたちも先生方も「ゆとり」や「ネットワーク」があることでどれだけ救われるか分かりません。

(5)人を幸せにする学校

 『すべての教師のために』には次のようなサブタイトルがついています。「一人で抱え込まないで! 子供と保護者と教師の幸せを願って」
通う児童・生徒にとっても
通わせる保護者や地域にとっても
働く教員にとっても
関わるすべての人にとって、幸せな学校をつくっていきたいものです。私たちは、彼女の死を決して無駄にしてはいけません。

 【気になっていること】

文部科学省の調査結果(H24)によると、通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童・生徒の割合は全体の「約6.5%程度の割合で在籍している可能性を示している」としています。現場の実感としては、もっと多いように感じているのではないでしょうか。
 学校現場では、大きな課題となっていることにも関わらず、困ったことに、都道府県、市町村の教育委員会内では、この問題をメインに取り上げる部署が存在していないようです。指導・支援に関する部署、特別支援教育に関する部署、人事・採用に関する部署、研修に関する部署などが、プロジェクトを組んで、総合的に学校を救済するシステムを考えていく必要があります。それは、同時に、該当の児童・生徒を救い、保護者を救うことになると思うのです。この問題は、いじめ、不登校、問題行動、学力向上(学力格差)など様々な問題につながることなのです。

【追記】

YKさんの件については、小野田正利先生の講演会や著作物で多く触れられています。また、最近発刊された妹尾昌俊氏の『教師崩壊』の冒頭でも触れられています。改めてYKさんご冥福祈りいたします。

 

   【2020.6.30

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公開記事のリライト】

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【人材育成・教員養成】子どもと接する上で大切にしたいこと

思いを語る

 教育は、子どもの心に火をつける行為です。教師の心に火(熱い思い)が無ければ、子どもの心に火はつきません。例えば運動会・体育祭や部活動では、勝利すること(結果)より、勝利しようと努力する心(過程)を育てることが大切。
 行事などでは、なぜその行事が大切なのか、行事への取り組みを通して、どのような力をつけてほしいのかのメッセージを送りましょう。負けたくない成功させたいという心が磨かれて、志になっていくものです。

Iメッセージを活用する

 思春期・反抗期など、接し方の難しい子どもとの接し方の一つとして紹介されているものです。
 例)「○○をしなさい(するな)」→「○○をしてくれると嬉しい(悲しい)」
 YOUメッセージからIメッセージに変えるだけで、子どもの反応(意識)が少しずつ変わっていきます。YOUメッセージに対して、Iメッセージには否定できないのです。感情を伝えることと、感情的になることは違います。

態度教育を重視する

 原田隆史氏は、「生徒の心のコップを上に向ければ、学校は変えられる」と語っています。知識や技能の伝達だけでなく、生き方・考え方、態度を教え育てる態度教育が重要です。心のコップには、「君は大切な存在である」「君には素晴らしい力がある」という自己有用感の水を注いでいきましょう。

 大リーグで活躍していたイチロー選手は、高校生の時「一流の野球選手になる前に、一流の人生を目指せ」と指導されたと語っています。子どもには人としての生き方・態度・言葉づかい等をしっかりと指導していきましょう。

コミュニケーションを大切にする(子どもの言葉に耳を傾ける)

 教師は、ともすると一方的に(長い)話をしてしまう性癖(?)が身についてしまうようです。話上手は聞き上手といいます。子どもの指導とは、時間のかかるもの、かけなればならないものです。聞いて聞いて聞く。課題のある子どもは、課題をもつにいたっただけの時間をかけて指導していく覚悟が必要です。
 コミュニケーションは、言葉のキャッチボール。こちらがボールを投げてばりいては、相手(子ども)は話したくなくなるものではないでしょうか。子どもの言葉に耳を傾ける姿勢を大切にしましょう。
(授業を改善していくヒントもここにあるようです)

「怒る」と「叱る」を区別する

 「怒る」は教師の感情をぶつける行為であり、自分中心の発想に立った行為です。一方、「叱る」は、相手をより良く変えていこうとする行為であり、相手の事を考えた行為です。そもそも「叱る」という言葉は、「口を使って相手を甦(よみが)えさせる」という意味があるそうです。どんな時も、冷静さをもって子どもの未来のためにしっかりと叱るようにしましょう。
 子どもは敏感です。教師の行いが誰のために行われているかを理解する力があります。中でも、不思議と手のかかる子ほど、教師の指導が誰のために行われているのかを敏感に嗅ぎ分ける能力が高いようです。「今、先生が怒っているのは、結局は自分のためだろう」と感じると指導はそれ以上入っていきません。

集団のもつ力学を重視する

 集団をかき回す問題の多い子どもも、集団に対する意識をもっています。例えば、「いじめ」が拡大していくとき、いじめている子どもだけでなく、周囲の子どもたちの意識や目線といったものが、抑止力になったり、拡大させていくことに大きな影響力をもっていることが多いのです。かつて、学校が荒れたときも、ルールを破り、授業を中断させる行為を密かに支持する中間層の存在が重要であると言われてきました。学級の立て直しには、課題のある子への直接指導だけでなく、中間層をどのように正統派に育て自信を持たせていくかが大きなカギを握っているのです。(2・6・2の原則)

   【2020.6.22公開記事のリライト】

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【ことば】「世に生を得るは事を成すにあり」

司馬遼太郎の『竜馬がゆく』には沢山の勇気と力をもらってきました。出会って、人生を変えた本とも言えます。

「世に生を得るは事を成すにあり」

第3巻に出てくるこの言葉は、
【人は誰もみな必要な存在であり、何か事を成し遂げるために生まれてきている。その何かを見極め、どんなことであれ目標をもって生きることが、人生を意義あるものにしてくれる。】
というような意味に捉えています。私の座右の銘でもあります。

坂本龍馬のような歴史に名を残すような人物だけでなく、すべての人が必要で、何かの大切な役割を持って生まれてきた必要な存在だと思います。

子どもたちもみな必要な存在であり、大切な役割を担うために生まれてきた

そう考え、その子の未来を共に育てるのが教師の仕事であると思っています。

   【2020.6.21公開記事のリライト】

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【人材育成・教員養成】保護者とのつき合いが「上手」な先生と「苦手」な先生

そもそも「敵」と考えていないか

 保護者からのクレームが入ると、端から敵対的な感情をもつことがあります。自分の行為(指導したことなど)を批判されたとしたら、気分を害することは当たり前と言えるかもしれません。正しく理解されなかったという悔しい思いもあると思います。大切なのは、どっちが正しいか白黒つけることではありません。親を言い負かせることでもありません。共に子どもの成長のためにベクトルをあわせて共同体制を築いていくことが大切であり、クレームという形のすれ違いをどのようによい方向性に導いていくかではないでしょうか。

保護者とのつき合いが「上手」な先生と「苦手」な先生 

 両者は、あることを意識しているかどうかで「大きな違い」があります。それはいったい何でしょうか?
 それは「保護者の思い」を理解しようとしているかどうかの違いです。先生という立場に縛られることなく、保護者の気持ちに寄り添って考えられること。先生方には、相手の立場に立って考えることができるようになってほしいと思っています。
 こじれる時の多くが、感情を害している保護者に対して、教師が理屈で正当化しようとした時です。保護者は「感情」を害しているのに対して、教師は自分の行為は正しいという「理屈」で向き合おうとするから上手くいかないのです。戦闘モードの保護者に対して、理論で戦おうとする姿勢がとても危険なのです。まずは、その保護者の思いを受け止めてみませんか。

背景を理解する

 保護者が、先生や学校に対して強く出るときの多くが、「自分の子どもが大切にされなかった」と感じたときや、「自分の(大変な)状況を理解してもらえない」と感じた時です。まず、保護者の話をじっくりと聞き、そういう思いを持たせたことを認めることから始めましょう。教師の側の理由は、落ち着いてから伝えればいいのです。
 理想的なゴールイメージは、「子どもの成長」という共通の目標に向けて、保護者と教師が共に頑張ることのできる関係づくりができることです。話し合いの最後に、子どものために共に頑張ることを確認することができれば大成功です。

情報源は子ども 子どもの心に落ちる指導だったか 

 保護者との関係において、一番の情報源は「子どもからの話」であることを忘れてはなりません。また、授業や部活動指導、電話や面談での対応や、保護者会での姿など、普段の姿が積み重ねられて、この先生は信頼するに足る人物かどうかを、生徒や保護者は感じるものです。最近では、他の保護者からの情報も影響が大きくなってきています。一つのボタンの掛け違いが、尾を引くことも増えました。
 先生方の中には保護者との接触を厭(いと)う傾向があります。若い時は仕方ないのかもしれません。しかし、距離があるほど味方にはなってくれません。相手がどのような先生か分からなければ「不安」な思いを抱くものです。不安だからこそ攻撃的になるのかもしれません。一度でも会話を交わす機会があるだけで、顔が見える関係となり、「あの先生なら知っている」となるものです。それが事態を大きくさせない力(抑止力)になる可能性があるのです。

先手を打ち続けていくこと

 大切なのは、クレームが来ないよう先手を打ち続けていくこと。プラスの表現で言い換えれば、生徒・保護者(できれば地域も含めて)信頼を構築することを大切にすることです。「あの先生なら大丈夫」「あの先生のことだから心配いらない」「あの学校は信頼できる」「理由があるから直接聞いてみた方がよい」などと思われる状況であれば、いきなり攻撃的になることも少なくなります。
 保護者と接する機会こそ、味方(ファン)を増やしていく、そんなチャンスだと考え前向きにとらえてほしいと思います。子どもとの日々の指導にも重要なカギが沢山あります。小さな信頼を一つ一つ、一人一人ゆっくりと構築していくことが、大きな力となっていくのです。(※下で紹介する「良い事電話」のように如何に情報を発信していくかも重要です)

チームで対応が基本

 それでもクレームが来たときは、どこに発火点があるのかを探り、共感することを大切にしてください。生徒の責任、保護者の責任に転嫁して終わるのではなく、指導のあり方を改善するきっかけをもらったとプラスに転換していきましょう。保護者からの厳しい言葉は、改善・向上への第一歩となります。そのような保護者は、自分の子どものことや学校のことに強い関心をもってくれていることを忘れてはなりません。やがて、協力してくれる大きな力になってくれる可能性もあるのです。何よりも大切なのは、一人で対応して抱え込まないことです。組織で受け止め、組織で解決の道を探ることです。

 

※「良い事電話」をしてみませんか。
 「課題のある子」として入学してきた子どもの保護者ほど、学校から電話があると「またうちの子が何かしましたか」(どうせ良くない電話)という思いを持ちます。そんな時「実は、今日嬉しいことがありまして、〇〇くん(さん)が□□□の様な取組を見せてくれたのです。保護者の方にも彼(彼女)の頑張っている様子を知ってほしいと思って電話してしまいました…。」
 忙しい中で、全ての子どもに全ての先生が同様のことはできないかもしれません。ノートを用意して、子どもたちの小さな変化を記録しておいて、後で保護者に伝えても良いと思います。

 当然、学級だよりや学年だより、学校ホームページなども、有効な情報発信ツールです。情報がある状態だと保護者は安心します。情報が少ないと不安になります。不安はやがて不満につながります。保護者とのつき合いが「上手」な先生は、情報も上手に活用しています。

 

   【2020.6.17公開記事のリライト】

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【人材育成・教員養成】孤立させない・一人で抱えこまない

よりより学校づくりは、よりよい人間関係から

 一人で苦しむ先生がいます。心を病み職場を去って行く仲間も多いです。困難の多い学校現場だからこそ、仕事が多忙を極める現状だからこそ、職場の人間関係は円滑で、心温まるものであってほしい。優しく心温まる明るい職場は、児童生徒の元気の源です。職場環境の、中でも人間関係の改善は、学校全体の機運の上昇につながる核心です。それは、誰かに与えられるのを待つのではなく、各自が何ができるかを考え、思いを実現させるための願いを行動にしていくことの積み重ねが必要です。よりより学校づくりは、職場のよりより人間関係づくりが不可欠です。

多忙を極める学校現場の危険性

 今の学校現場の日々は多忙を極めています。授業の準備だけでも大変ですが、それ以外にもやらなければならないことが沢山あります。加えて、急な対応や難しい対応を余儀なくされることも多くなったと感じています。個別の配慮が必要な児童生徒も多く、保護者などからの要求も多岐にわたり、それぞれへの対応にも神経をすり減らす毎日が続いています。多くのベテランが退職し、若手が増えている状況もあります。多忙感は、心のゆとりを削り、他者との関わりを減らし、一人一人の心を自分の領域を守ることに向かわせ、人間関係を疎遠にしていく危険性があります。

孤立させない・一人で抱えこまない

 様々な理由で、苦しみを抱え、心の病を患い学校現場を離れていく教員が沢山います。苦しんでいる先生を理解し、ともに協力し支え合えるそんな職場がいい。温かく優しい明るい職場は、学校全体を活気あるものにしていきます。
仕事が大変でも職場の人間関係だけでも円滑で温かいものでありたいと思うのです。「孤立させない・一人で抱え込まない」この言葉を合言葉に、共に働く仲間がそれぞれの良さを生かしながら力を発揮し合える職場、この仲間と働けて良かったと思える職場、そのような職場にしていきたいものです。

非難や批評より、仲間として何ができるか 

 生徒指導に関わる保護者対応が終わって職員室に戻ったら、誰も残っていなかった…。という職場より、残っていた先生達がさりげなく労わってくれる、そんな職場がいいと思います。
 自分の力がないから、自分の責任だからと一人で解決しようとせず、日々、良かったことも、上手くいかなかったことも、報告・連絡・相談できる関係性を大切にしましょう。一人で抱え込んで苦しむのはいけません。
 学校においけるトラブル対応(生徒指導等)の原則は、情報の共有化と組織による対応が大前提です。困っている先生や、苦しんでいる先生がいたら、周りは何ができるかを考え、具体的に動いてあげましょう。

厚みのある組織・重なり合う人間関係 

 野球では、ベースカバーに入ることなどをバックアッププレーといいます。結果的に無駄になるかもしれない、そのような周囲の配慮こそ厚みのある組織づくりには必要なのです。
 厚みのある組織や重なり合う人間関係は、これから益々増えていく若手教員の支援・育成にもつながるものであり、心を患い休職等に入る先生を未然に防ぐ力にもなります。健全な学校づくりには、不可欠であり大きな力となります。
 一人一人を大切にし、育てることのできる職場こそ、児童生徒一人一人を健全に育てることのできる職場なのだと思います。

   【2020.6.16公開記事のリライト】

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