次代を担うみなさんへ  

若手・中堅・管理職、これからの教育・学校を支えるみなさんに伝えたいこと。

【教育】学力向上という名の学力低下

1「学力向上」

 「学力向上」を重要な学校課題としている学校がほとんどではないでしょうか。しかし、その取り組みが本当に学力を向上させているのかの検証が必要なのではないでしょうか。
 教育現場では、方法論が問われることが多く、学力向上のために何をするのかが問われることが多く、「型」にはめることが目的化している面も否めないように思います。

2 問題解決的な学習

 学力を向上させる重要な授業改善の方策の一つとして「問題解決的な学習」があります。小学校の授業では常識になっているといっても過言ではないと思います。教師の一方的な説明中心の授業からの脱却という面からも、中学・高校でもその重要性が認識され、徐々に普及・定着が進んでいるのではないでしょうか。

3 算数に見られる危惧 

 一方、以下のような課題も見られます。一番顕著な算数を見ています。小学校の算数では「自力解決」の時間を設定して、各自が問題を解決していくという進め方が一般的です。ところがよく見ると、自力で問題を解決しているのがいつも同じ児童(塾に通っているような)で、様々な方法を考え出して、みんなの前で発表しています。一方、自力で解決できない児童もいて、多くの場合、自分で解決できないまま時間が終了し、他の児童の説明を聞くことになっています。集団で解決方法を共有化した後、「適応問題」に全員で取り組むことになりますが、これらの児童の多くが、理解できていないため問題を解くこともできないまま授業を終えているということが、ほとんど毎回に近くおきている。
(時間切れのために、「適応問題」が宿題になると、この子たちはさらに手をつけられないまま次の授業を迎えることになります)
 先生方の方でも、ヒントカードを出すなどの、できない子どもたちのための支援策を講じていますが、根本的な救済になっているかというと疑問があります。

4 中学校入学時にすでに顕著な学力差

 実際に、中学校で新入生を対象に実施している学力テストを分析してみると、国語のテストでは、正規分布に近い結果が見られても、数学(算数)では、上位層と下位層の二極分化が顕著な状況となっているのです。(この二極化の現状は、年々進行しているようです)
 学力向上策として実施されている「問題解決的な学習」に取り組めば取り組むほど、学力格差を生じ、結果、全体の学力低下につながっているという現実があります。(公立中学校では、上位層が私立中に流れるという問題もあります)

5 問題の本質

 これは、「問題解決的な学習」自体の問題と見るべきではなく、例えば導入の仕方や自力解決の時間設定などの運用上の問題としてみるべきものなのかもしれません。また、学力格差の原因が、「問題解決的な学習」以外の違う要因があるのかもしれません。いずれにしても、「問題解決的な学習」をしていれば、「学力を向上させられる」と固定的に考えることは、とても危険なことであり、子どもの姿を見ながら授業改善を進めていくことが大切なのだと思います。

6 根本的な問題

 同様のことが、「言語活動の充実」などでも多く見られます。根本的な問題として、学校現場にゆとりがないことが一番の問題です。新たな施策が導入されても、トップダウンで突然降りてくるだけで、パイロット校の取り組みを徐々に学校現場に広める工夫
や現場で教育に携わる先生方の声を反映した改善のないまま実施されている点が一番の問題です。(年々この傾向が強くなっている)
 同時に、いじめや不登校、アレルギーや発達の課題のある児童・生徒への対応や、保護者への対応など、学校現場はかつてないほど疲弊していることを教育行政に携わる方々は理解してほしいものです。